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意識高い系ズボラ

ライフハック、健康情報、オピニオンなどの真面目なネタをふざけた文でお送りします

セロトニンは「幸せホルモン」では無い:健康メディアがリテラシー無き人を食い物にする

脳科学 脳科学-感情

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セロトニンは幸せホルモンじゃない

最近、ネットの健康系の記事を見ていると、「セロトニン」という名前をよく目にするようになりました。
セロトニンは脳の中にある物質です。堅い言い方をすれば、「神経伝達物質」として働く物質です。

 

そしてメディア(特に若い女性が見るような健康・美容系メディア)ではセロトニンのことを「幸せホルモン」だとか「幸福物質」とよく呼んでいます。


しかし、ぼくはこのネーミングに違和感をバリバリ感じています。

 

 

セロトニンが幸せホルモンと呼ばれてしまう理由

なぜ、彼らはそのようなニックネームをつけたのか?
1番の理由は、うつ病とこの物質が大きく関係しているから。

 

うつ病の人の脳ではこのセロトニンの働きがうまくいっていないと言われています。

うつ病の治療薬にSSRI(セロトニン再取り込み阻害薬;覚えなくていいです)というものがあります。これを飲むと、ある神経が別の神経に情報を伝える場所(シナプス間隙:テストには出ません)のセロトニン量が増えて、これによってうつ症状が改善することがわかっています(効かない患者さんもいますが)。

 

だから、このセロトニンを増やせば「鬱と反対側の気分」=「幸福な気分」になれる!

セロトニンは幸せホルモンだあああ!
という発想のもと、このキラキラネームが生まれたのです。

 

で、コレ系の記事のこの後の流れとしては、

 

  • セロトニンを増やすには日光を浴びること!休みの日も外に出て日光を浴びよう☆
  • セロトニンはリズム運動をすることで増えます!ウォーキングやガムを噛むことが有効だよ☆
  • セロトニンはトリプトファンというアミノ酸からつくられます!牛乳やバナナを食べよう☆

 

というのが典型的です。
これらのこと自体は間違ってないと思います(ただ、牛乳・バナナで実感できるほどの効果が得られるかはすごく疑問)

 

セロトニンが幸せホルモンではない理由

しかし、セロトニンの働きはそれだけではありません。

例えば、統合失調症という精神疾患の治療薬としてセロトニン働きを抑える薬が使われています。

 

どうして起こるの?/脳の生化学的仮説 | 理解する | 統合失調症ナビ

 

統合失調症は「幸せになりすぎて過剰なリア充オーラをまき散らし、周囲の人に迷惑をかける精神疾患」だから、幸福ホルモン・セロトニンを抑える薬を服用する、というわけではないですよ。
統合失調症はとても重篤な疾患です。

でもセロトニンの働きを抑える薬を使うんです。別に患者さんから幸せを奪うために処方するのではありません。

 


また、セロトニンが不安や恐怖を引き起こすこともわかっています。

 

Nature ハイライト:セロトニンは不安と恐怖学習を引き起こす | Nature | Nature Research

背側縫線核から分界条床核(BNST;自律神経・神経内分泌・行動応答の制御に関わる前脳構造)へのセロトニン作動性投射は、コルチコトロピン放出因子(CRF)ニューロンを活性化して、BNSTから腹側被蓋野と外側視床下部への抗不安出力を抑制する

 

抗不安出力を抑制する。つまり、セロトニンの働きで不安な気持ちになりやすくなるということです。不安と幸せって真逆の感情ですよね。


さて、ここまでの説明を読んでもまだセロトニンが幸福ホルモンだと呼べるでしょうか?


つまり真実はこうです。

「セロトニンは働く場所(脳部位)によって役割が違う」

 

 

リテラシーの無い読者を見下すメディア側

セロトニンに幸福ホルモンと名付けたのは、若い読者の頭に入りやすくするためでしょう。

 

セロトニンという1つの物質に「幸福」という1つの効果をラベルするのは、読む側としては頭にスムーズに入ってくる。
セロトニンという聞き慣れないカタカナ用語よりも、幸福ホルモンという言葉の方が頭に馴染みやすいですからね。

 

ですが、この事例は、健康系メディアが読者のリテラシーの低さを舐めていることの象徴だといえます。

 

  • 「ここまで表現のレベルを下げてやらないと理解できないだろう」
  • 「幸福ホルモンという呼び方には語弊があるが、記事が読まれるようになるなら構わない」
  • 「記事の内容を疑う読者などほとんどいないだろう」


(このセロトニンの件に関していえば、ライターのレベルが低すぎて調査が甘く、セロトニンを本当に幸福ホルモンだと思っていたということも考えられます。が、それはそれで読者を舐めてますね)

 

そして、メディアが読者を舐めきっている背景には、実際に読者の科学リテラシーが低いという事実もあります。

だから、メディアの情報を何でも鵜呑みにし、ときに悪質な業者の商品に騙されるなどの被害が出て来るのです。

 

なぜ健康・美容系は信頼性の低いクソ記事が氾濫しやすいのか

例えば、IT系の記事で嘘の情報が流されればすぐにそのメディアは非難されます。
iPhoneの機能に関する記事があったとして、それが間違っているかどうかは、iPhoneをその記事通りに操作してみればすぐにわかるからです。

 

一方、健康、美容の情報など人体に関すること結果が見えにくいということがあります。


例えば、「リズム運動でセロトニンの分泌が増える」という定説がありますが、たとえそれが正しいとしても、自分でリズム運動をして、自分の脳内のセロトニン量を測ることなどできません。

 

肌など外から見えるものにしても、効果が出るまでに長期間かかるため、すぐに効果測定ができないという事情があります。

 

つまり、そういった身体の現象が自分(個人のレベル)で確認しづいらいことをいいことに、ろくに科学的検証をされてない事柄も好き放題に記事にできてしまうのです。

 

そして、それを安易に信じる人がいるから、こういったメディアがさらに増長しちゃう。
そういう意味で、健康・美容系の記事というのは、読者に一定の科学リテラシーが求められてきます。

 

「◯◯を食べれば健康になれる」

 

  • では、そのメカニズムは何なのか?
  • その効果はきちんと組み立てられた試験(もちろんヒトでの臨床試験)で、科学的に立証されているのか?
  • 有識者はどういう意見を持っているのか?(1人ではなく複数人)


健康系記事を読む読者のリテラシーの低さと、それにつけ込んで質の低い記事を量産するメディアが存在していること。
セロトニンを幸福ホルモンと呼ぶという現象は、そのことを象徴している出来事だといえます。

 

 

 

 

 


というか、幸せホルモンというネーミング自体が「わかりやすさ」を通り越して、人を小馬鹿にしたようなニュアンスがありますよね。頭の中がお花畑の人に向けているというか。
実は、その辺が1番の違和感かもしれないw

 

(そしてこの記事は、ぼくの拡散力では1番読んで欲しい人たち(20・30代の割とキラキラ女子)のところまで届かないんだろうな)