ノンストレス渡辺の研究日誌

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書評『薬を使わずに胃を強くする方法』〜心身を整えるにはまず胃から〜

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世の中に胃腸に関する本はたくさんあるけど、ほとんどが「腸」にばかり注目していて「胃」に関する知見が少ない。

 

だけど、健康のためには胃の働きもとても重要。

胃が強く、肉をたくさん食べる高齢者ほど長生きする」という事実が良い例だ。

 

年齢とともに衰える胃の働きを維持・強化しないと、よく食べ、よく消化し、しっかりと栄養を吸収する事ができなくなってしまう。それによりさらに身体の衰えは加速する。

また、ぼくのように胃弱(胃のもたれ、膨満感、胃液の逆流など)で苦しむ人は、人一倍胃を強くする事を意識しないといけない。

 

というか、何より美味しいもの・好きなものを思うように食べられないというのは結構な苦痛だ。

 

というわけで読んだのが『薬を使わずに胃を強くする方法』という本。

消化器官の中でも「胃」にフォーカスした数少ない本。

 

この本の最もよかったところは、

 

対症療法的な話ではなく「胃を強くする」という攻めの姿勢が伺える

 

という点だ。

 

 

 

 

「胃をいたわる」ではなく「胃を強くする」

胃に関する本やネット記事を読むと、だいたい

  • 消化の良いものを食べよう
  • 就寝前には食べないようにしよう

など、出来るだけ胃に負担をかけないようにする方法ばかりが書かれている。

 

確かにそれも大事な事だ。

しかしそれは、「胃弱はもうしょうがない事だから胃を労っていくしかないのよ」という消極的な姿勢とも言える。

こちらとしては、できれば普通の人と同じように食べたいものを食べられるようになりたいのである。

たまには(たまにでいいから)、脂っこいものやアイスクリームなんかを何の気兼ねなく食べたいのだ。

 

そんな中、この本は「胃を強くして、肉とかガンガン食おうぜ」という気概がうかがえる。肉も魚も野菜もしっかり食べる事が健康の秘訣だと。

 

その前向きな姿勢だけで胃弱のぼくとしては希望をもらえる。

年をとっても、生まれつき胃弱でも、健康な胃を手に入れることができるかもしれないんだ、と。

 

あと、胃酸の逆流に対して胃の本で良く勧められている「胃酸を抑える薬」なども基本的に使わない事を推奨している点も好感が持てた。ぼく自身の体験としても、あれは全く効かなかった。症状によっては使った方が良い場面もあるんだろうが、胃の膨満感や胸焼けで病院に行くと

胃酸を抑える薬を出して、「様子を見ましょう」と言われ、それ以外の事をしてくれないという事が大半だ。

胃酸が少なくなる事でも胃液の逆流は起こる事を知らないんじゃないかと疑念が湧いてくる。

 

あとは、東洋医学や民間療法的な知見の紹介も多かった。その辺はエビデンスはしっかりしてるのかなと確認する必要はあるなと感じた。

 

以降は、本の中で参考になった部分を一部ピックアップしてみる。

 

胃弱とはどういう状態か・なぜ起こるのか

胃弱とはどういう状態か

  • 胃液の分泌が少ない人
  • 胃下垂や胃アトニー* 持ちの人

 

*胃アトニーとは?

胃無力症と言って、胃壁の筋肉が緩み、胃の運動や消化が弱まっている状態。胃は脳がコントロールしているというよりは、消化器独自の自律神経によって動いている。この神経コントロールがうまくいってないと胃アトニーになる。また、胃下垂や胃アトニーは中医では脾臓を強くする事が重要だと言われている

 

↑胃アトニーは、胃下垂かつ、胃の運動が弱っている状態をさすよう。

 

 

なぜ胃弱がおこるのか

  • 胃そのものの機能が低い
  • 消化器への神経伝達がうまくいっておらず、胃の働きが強すぎたり弱すぎたりしている
  • 肝臓の異常。脂っこいものを食べて気持ち悪いなら肝臓の機能が低下している(原因はアルコール、腸内環境、ストレス)

 

神経伝達がうまくいかない原因は、おそらくストレスだろうか。肝臓の異常が胃弱とどういう関係があるのかも深掘りしたい。

 

「胃弱≒胃液不足」の問題点

  • 胃液不足はたんぱく質を十分に消化できないため、栄養的にタンパク質が不足した状態に
  • たんぱく質は胃の粘膜や酵素の原料なので、不足するとますます胃弱に
  • たんぱく質がうまく消化できないと、そこに結合しているビタミンB群やミネラルも吸収できない。するとエネルギーをうまく生み出せなくなり身体の不調が出まくる
  • 未消化のたんぱく質は腸内で腐敗・発酵してアレルギーの原因となる事も
  • 未消化のたんぱく質が発酵すると、ニトロソアミンという「発がん、心筋梗塞、脳卒中」の原因となる物質もできる
  • 未消化のタンパク質が荒れた消化管から血管に入ってリーキーガット症候群を引き起こしたり、心臓病や自己免疫疾患の原因にも。
  • 胃液の酸性度が少ないと、胃液の刺激によって分泌される胆汁や膵液の量を少なくなる
  • 胆汁は十二指腸に分泌され、殺菌の役割も持つため不足すると腐敗・発酵の原因に
  • 殺菌がうまくいかないとSIBO(Small Intestinal Bacterial Overgrowth:小腸内細菌過剰繁殖)になり、これにより発生したガスが胃を圧迫して逆流性食道炎になることも
  • 胆汁と膵液が不足すると、それぞれ脂質と炭水化物の消化が不十分に。未消化の炭水化物は発酵・腐敗の原因にも。
  • 消化不良は栄養失調を引き起こし、疲労やだるさ、不眠などを引き起こす

 

食べ物は口に入れて飲み込んでしまえばオーケーというわけではなく、ちゃんと消化しないと意味がない。どころか様々な有害な症状を引き起こすという事がよくわかる。 

 

胃の膨満感の原因

ガスの発生が最も考えられる原因。

 

胃酸や胆汁が少ない事で食べたものの殺菌が十分に行われない

→バクテリアが十二指腸などで未消化の糖分などを発酵させる

→炭酸ガスが発生し、胃内容物の逆流や膨満感が起こる

 

本書には記載なかったが、胃の働きが悪く、食物が来ても胃が膨らまなかったり、胃のぜん動運動が不十分で胃の滞留時間が長いことも原因だと考えられている。

 

胃液の逆流の原因

胃酸の逆流が起こる機能的な原因ははっきりとわかっていない。

消化器で発生したガスによって胃の内容物が押し上げられているという説が有力。

 

・胃酸が少ない事で食べたものの殺菌が十分に行われない

→バクテリアが十二指腸などで糖分を発酵させる

→ガスが発生し、胃内容物の逆流や膨満感が起こる

 

本書には記載なかったが、胃を圧迫するような姿勢をとると胃の内圧が上がり、胃液の逆流は起こりやすくなる。

 

胃酸の状態を調べる方法

  • 小虹彩輪の内側の色を見る*
  • 胃に膨満感がある、もたれる、胸焼けがすることのチェック
  • 食事中に酸っぱいものを食べて気分が良くなるか悪くなるか(良くなるなら胃酸が足りない)

 

*詳細については本書を参照

 

胃弱を改善するには

  • しっかりと噛んで*唾液をだす**こと
  • 酸味のあるものは、唾液の分泌を促す(酢、レモン、梅)
  • 苦味のあるものは、唾液や胃酸、胆汁の分泌を促す働きがある(ハーブや春の野草など)
  • 朝も食事をとって、消化管のぜん動運動うながす(胃の筋力低下を防ぐ)。まずはコップ一杯の水にレモンを一絞りしたものから。
  • 交感神経が優位の時は、消化器に血液があまり送られず動きもとまる。食事の時はリラックスする事が重要。
  • 日常生活のストレスを減らす。ストレスの元を断つ
  • 脳からの刺激として消化を促すものを食べる(例えば自分の大好物を食べるなど)
  • 昔の人は、消化吸収をサポートする食材として梅干し、センブリ、発酵食品などを食べる事で食欲を増し、胃や腸内細菌のバランスを整えていた
  • 胃酸の分泌を調整する食べ物として、りんご酢、せんぶり、梅干し、シソエキス、梅エキスなどを利用する。逆流性食道炎では食後にある程度胃酸が出ないと、胃の上部にある括約筋(噴門)が閉じない
  • 生の野菜には自身を消化する酵素が含まれており、50℃を越すとこの酵素は失活する。一方で野菜は加熱した方が細胞膜が破壊され、栄養を吸収しやすい。よって生野菜と加熱野菜は両方食べた方がいい。生で食べる場合、50℃洗いをすると糞線虫という寄生虫を殺し、食感を良くする効果がある。
  • 冷たい食べ物は胃の中のペプシンの活性を落とすので、たんぱく質の消化を妨げる
  • ココナッツオイルや米ぬか油はリノレン酸が少なく、油酔いによる食欲不振が軽減できる

 

*しっかり噛む

しっかり噛むことで食べ物を細かく砕き、胃の滞留時間を短くする

 

**唾液をだす

唾液に含まれるアミラーゼでデンプンをしっかりと分解してやる事で腸内での発酵を防ぐ。また、唾液を出すことが胃酸の分泌を刺激するので、既に述べた胃酸不足から始まる様々な問題の解消に繋がる 

 

【食欲を促す・消化を助けてくれる調味料・ハーブ】

  • フレンチドレッシング(酢を使った調味料)
  • クミン
  • キャラウェイ
  • ターメリック
  • カルダモン
  • シナモン
  • クローブ
  • ブラックペッパー
  • リンドウ
  • ジェンティアナ
  • ショウガ
  • わさび
  • タデ
  • サンショウ
  • 大根おろし
  • セイヨウタンポポ
  • セージ
  • ペパーミントティー
  • カモミールティー(リラックス)

*詳しい効能については本書を参照 

 

【腸のぜん動運動、腸内環境、粘膜を整える】

  • 粉昆布
  • アロエ葉(アロエベラ)
  • オオバコ種皮
  • オートブラン(オート麦ふすま)

*詳しい効能については本書を参照

 

【健胃作用のあるもの】

  • ショウガ

  

【ガスや膨満感を抑えてくれるスパイス・ハーブ】

  • フェンネル
  • カルダモン
  • レモンバーム

 

【肝臓や胆のうを整えるハーブ】

  • たんぽぽ
  • アーティチョーク

 

 

しっかり噛むためには何か噛みごたえのあるものを料理に入れるといいと思った。ゴマとか砕いたナッツとか。

食欲が湧かないと胃酸が出ない。美味しそうな写真を見るなどして、食欲が湧いて、胃の働きがよくなるというのは実感としても確かにある。食前にインスタやレシピ本などで美味そうな料理の写真を見るのはかなり有効。

リラックスするという意味で、ハーブティーやスパイスチャイを飲みながら食事するのは理にかなっているなと思った。 

 

 

【食事以外で胃を強くする】

筋力トレーニングは細胞のブドウ糖取り込みを亢進し、すい臓の負担を減らす。東洋医学の経絡の視点から見ると、足の内側にある脾経は深部の体幹をサポートし、横隔膜に繋がっている。脾経を鍛えることは脾臓を鍛えることになり、その結果胃も強くなる。

 

呼吸法。吸うより吐く方を長くして深呼吸をするとリラックスできる。これを食事の前に行うと、消化器がちゃんと動くようになる。

 

 

 

 

 

まとめると

  • よく噛む!!
  • 朝食で胃を刺激し、胃の働きの低下を抑える
  • あらゆる手で食欲増進!(酸味、苦味、スパイス、美味い料理)
  • 呼吸法やハーブティーでリラックス
  • ストレス対策
  • 筋トレ
  • 脾臓や肝臓、腸内環境を整える

 

胃の弱さが健康に与える影響も大事だが、それより何より自分の好きなものを思うように食べられないというのが何よりもツラい。

 

強靭な胃を手に入れ、いくつになっても美味いもんをたらふく食えるようになろう。 

 

あと、本記事では全く触れていないが、本書は前半は「胃を強くする方法」、後半は”コレステロール悪玉説はうそ”、”病気は栄養で治すという姿勢をもつ”などの「医学常識にカウンターを食らわす」という内容になっている。

 

本記事以上に「胃を強くする方法」の理解を深め、医学常識にとらわれずに健康な身体を手に入れたい人はぜひ手にとってみてほしい。